【秘密保持契約書2:「発効日には気をつけろ!」】


●最初に契約書を見たときに、目に飛び込んでくるのは表題(title)
です。単純に"Agreement"と書いてあるものもありますが、これだと後日、
ファイリングした契約書の中から探し出す(find out)際に、ヒジョ〜
に手間がかかります(takes time)。案件に即して(depending on the project)
具体的な表題を付けた方が良いと思います。今回は秘密保持契約ですから、
最低でも"Non-Disclosure Agreement"という表題にしましょう。


●表題の次には頭書(preamble)が続きます。例えば以下のような文章
です。
This Nondisclosure Agreement (the "Agreement") is entered into
 and effective as of the __ day of________, ____(the "Effective Date"),
by and between ABC,Inc. ("X"),Xの住所 and XYZ Corporation
 ("Y"),Yの住所.


これを翻訳すると以下のようになります。
「本秘密保持契約書(以下「本契約」という)は、○○に所在するABC Inc
(以下「X」という)と○○に所在するXYZ Corporation(以下「Y」という)
との間で、△年△月△日付(以下「発効日」という)で締結され、同日付で
発効した」



●契約書中、 (the "Agreement")もしくは(referred to as "Agreement")
のように、( )付けで大文字になっている部分があります。これは、
以後契約書において、略称として使用される言葉です。何度も同じ
言葉を使うのは面倒ですもんね。


●英文契約書では、この頭書に契約当事者(party to the agreement)
の住所を記載することが多いです。日本語の契約書では、住所は大抵、
最後の契約締結者の部分に記載されます。時々、当事者に子会社(subsidiary)
も含むなんてことが、さらっと書いてあったりするので、住所の記載
とともに確認したほうが良いですよ。


なぜなら、契約当事者になれば、秘密情報を開示される対象になるから
です。自分が情報を開示する側(discloser)であれば、開示者は限定し
たいですが、逆に、受領する側(recipient)であれば、開示先は広めに
設定したい所でしょう。ここは契約交渉者(negotiator)の腕の見せ所
です!


子会社が追加されている場合の文章は、こんな感じです。
会社名,including its majority owned or controlled subsidiaries
 for so long as such ownership or control exists


これを訳すと、以下の通りです。
「会社名及び、当該会社の所有権又は支配権が存在する限りにおいて、
当該会社が株式の過半数を保有するか若しくは支配下に置く子会社」


●頭書において注意しなければならないのは、契約の発効日(effectvie date)
です。なぜなら、この日付から契約書が有効になるからです。秘密
保持契約に関して言えば、発効日以後に開示された情報(disclosed information)
のみが、秘密保持の対象(subject)になるのです。ですから、実際に
情報開示を開始した日付を設定しなければ、「発効日前に開示された
情報はオープンだよね?」ということになってしまうのです!!


たださえ、契約交渉の場は緊張する(nervous)のに、まして相手が
外人さんで、英語で交渉している訳です。「さあ、契約書に
サインを!」と迫られて、頭が働かなくなって(brain does not work)、
思わず当日の日付を書いてしまった!となっては、後の祭り
(too late for regrets)。そういった大事な場面でこそ、専門家の
冷静なアドバイスが必要なのです(と、自分の仕事をアピールしてみました)。


但し、契約書中に、別途、契約の有効期間(term)を定める条項
(article)があれば、効力の開始日を情報開示の日付に合わせれば
良いです。この場合、発効日は実際に、契約を締結した(executed)
時点、つまり両者のサイン(signature)が揃った日で構いません。
いづれにしても、発効日は、契約書全体の有効期間と情報開示の日と
を考慮して(take into consideration)決める必要があるという
ことです。


●具体的な日付の書き方は、上記の例文で"the __ day of________, _____"
となっている下線部に手書きで日付を書き込みます。2004年2月20日
であれば、“the 20th day of Febraury, 2004”となります。


●本屋に並んでいる英文契約書の解説本には、頭書きに続いて、序文
("Whereas clause"とか"Recital"などと呼ばれます)が記載されて
いることがあります。これは、契約に至る経緯(detail)や、当事者
の意向(intention)を明らかにするもので、「甲は○○を購入する
ことを欲し、乙は○○を甲に売却することを欲し・・・」といった意味
の文章が書かれています。


しかし、契約の条件は以後の条文で明記されますし、序文自体が当事者
を法的に拘束する(binding)ものではないと考えられているようです。
言い回し(wording)も古典的です。私が契約交渉をしているのは米国
カリフォルニア州のソフトウェア会社が多いのですが、彼らが出してきた
契約書で序文が書かれているものはまずありません。序文が記載されて
いなくても問題無いと思います。


但し、序文が書かれている場合、後で契約の文言の解釈(interpretation)
に争い(dispute)が生じた場合、序文の内容を勘案して解釈することも
あるようです。書かれている場合は、記述の正確さ(accuracy)に
注意しましょう。